被相続人の相続対策とは

被相続人にできる不動産相続対策

相続人同士での争いを避けてスムーズに相続を進めるには、被相続人による相続対策が重要です。こちらのページでは、名古屋市で事業用物件・収益不動産に特化して相続や売却のサポートを行うWIN SQUAREが、不動産相続のトラブルを回避するために被相続人ができる対策について紹介します。財産の把握や生前贈与、家族信託、遺言書の作成などについて知っておきましょう。

認知症になる前の相続対策の重要性

認知症を発症すると徐々に判断力が低下してしまいます。それにより、自身で財産の管理をすることが困難になるだけでなく、法的にもさまざまな契約を行うことができなくなります。不動産売却、生前贈与、遺言書の作成などもできなくなるため、なるべく早くから相続対策を進めましょう。

認知症発症前の対策

認知症発症前の対策

認知症発症前であれば、遺言書の作成、生前贈与、家族信託といった相続対策ができます。自身の意思で後見人の選出ができる「任意後見」も利用可能です。対策ができないまま認知症を発症してしまった場合は、本人・家族・親族が家庭裁判所に申し立てをして後見人を選定しなければいけません。

家族信託とは

家族信託とは

家族信託とは、認知症などによって自身が財産管理をできなくなった場合に、信頼のおける家族・親族に財産管理を託す制度です。これにより、認知症による相続の難航や知財産を第三者に奪われるといったトラブルを避けられます。

家族信託は「委託者」「受益者」「受託者」の3つの役割があり、委託者と受益者を資産の持ち主である被相続人、受託者を相続させたい人物に設定することで、被相続人が生きている間でも受託者による財産の管理が可能です。

また、家族信託では二次相続までを想定して受益者の指定ができるため、遺言書よりも相続人指定の自由度が高いのもポイントといえます。

将来的なリスク回避を考えて家族信託を検討する際は、専門知識のある不動産会社に相談してみましょう。

家族信託を利用する方法

家族信託を利用する場合は、委託者と受託者の間で信託契約を結ばなければいけません。「管理する財産の範囲」「管理方法」「受益者」などについての取り決めをします。その後、信託用の銀行口座を開設し、財産の信託登記を行いましょう。不動産などの場合、委託者から受託者へ名義を変更する必要があります。

相続を「する側」の方に生前対策が必要な理由

相続を「する側」の方に生前対策が必要な理由

「相続トラブル回避」や「遺族の負担軽減」を考えるのであれば、被相続人による生前対策は非常に大きな意味を持ちます。特に相続税対策が不十分であった場合、資金不足によって相続人の負担となってしまう恐れもあるため、しっかりと生前対策を考えましょう。

相続トラブル対策

事前の家族・親族間での話し合い、遺言書の作成によって「誰がどの財産をどれくらい受け取るか」を決めておくことで、相続トラブル発生のリスクを軽減できます。

納税資金の対策

納税資金の対策

現金での相続が少ない場合、相続税の支払いが難しくなることがあります。そのような事態を避けるために、不動産を売却して現金化するなど、事前に準備を進めることが大切です。相続税がどの程度発生するのかを見据えて対策を立てることで、納税資金をスムーズに確保できます。

また、生命保険を活用する方法も効果的です。生命保険金には非課税枠があり、納税資金の確保に役立つ特長があります。不動産と生命保険、それぞれの特性を踏まえた対策を検討することで、安心して相続に備えられます。
どの対策が最適かは状況によって異なるため、専門家と相談しながら進めると良いでしょう。

相続税対策

生前贈与を活用すれば、相続税を節約することができます。ただし、控除額には上限があるため注意が必要です。贈与税には、年間110万円以下が非課税となる「暦年課税の基礎控除」と、累計2,500万円まで課税が繰り延べられる「相続時精算課税制度」があります。相続時精算課税制度では、贈与時に贈与税がかからない代わりに、相続時に他の財産とまとめて課税される仕組みです。

生前対策における不動産贈与のメリット

不動産は高額な遺産となるため、生前贈与による節税対策が効果的です。生前贈与では、贈与する相手やタイミングを自由に選べるほか、贈与税の控除を活用できます。贈与税には、年間110万円以下が非課税となる「暦年課税の基礎控除」と、累計2,500万円まで課税が繰り延べられる「相続時精算課税制度」があります。また、不動産を贈与した場合、その後の不動産所得は受贈者に帰属するため、相続人の負担を軽減する効果も期待できます。

相続の生前対策

相続の生前対策

遺産分割の対策

不動産は物理的に分割ができないため、遺産分割でのトラブルに発展しやすいとされています。また、相続人の間にも「不動産所得を得たい」「売却してまとまったお金を得たい」などさまざまな考えがあるため、まとまりにくいのもトラブルに発展しやすい理由の一つ。こうした遺産分割のトラブルを避けるには、被相続人が存命の間に分割方法を決めておき遺言書を作成するのが効果的です。被相続人を交えて相続人が考えや気持ちを伝えあうことで、納得感のある相続が実現できます。

相続税の対策

相続した財産が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納付が必要となり、相続開始から10カ月以内に申告を行わなければいけません。分割方法が事前に決まっていることで、「相続税が発生するか」「相続税の額」がわかるため、事前に準備が可能です。

二次相続の対策

二次相続とは、「相続された財産が、さらに相続されること」です。

最初に父親が亡くなり母親と子どもが遺産相続することを「一次相続」と呼びます。その後、母親が亡くなった場合に、父親から母親へ渡った財産が子どもへ相続されることを「二次相続」といいます。

二次相続では、配偶者に対する税額軽減が使えず、基礎控除などの枠も狭まってしまうため注意しなければいけません。これにより、相続税の負担が大きくなる傾向にあり、二次相続を見据えた相続対策を考える必要があります。

生前贈与について

生前贈与とは

生前贈与とは

「生前贈与」とは、被相続人が生きているうちから相続人へ財産を贈与することを指します。生前贈与を行うことで、相続税の課税対象となる財産を減らせるため、相続税対策が可能。贈与のタイミングや贈与する相手を自身で選べるのも生前贈与の大きなメリットです。また、相続人としては、早期に資金が手に入ることで、子育てや介護の費用の負担を軽減できます。

生前贈与では贈与税がかかりますが、年間110万円以下の贈与が非課税となる「基礎控除」のほか、相続時に課税を繰り延べることができる「相続時精算課税制度」があります。この制度では、累計で2,500万円までの贈与に対し、贈与税がかからずに課税を繰り延べることが可能です。制度の適用には条件があるため、生前贈与による節税効果や必要な手続きについて不安がある場合は、不動産会社や専門家に相談するのがおすすめです。

生前贈与をおすすめるケース

以下のようなケースでは生前贈与を行うことで大きな効果を得られる可能性があります。

将来的に財産評価額が上がる可能性がある

将来的に財産評価額が上がる可能性がある

贈与税は、「贈与契約が成立した時点での財産評価額」に応じて税率が決まります。そのため、将来的に財産評価額が上がる見込みであれば、早めに贈与することで節税につながる可能性があります。

60歳以上の親が18歳以上の子どもへ贈与する

65歳以上の親が20歳以上の子どもへ贈与する

「相続時精算課税制度」を利用することで、累計2,500万円までの贈与について贈与税がかからずに課税を繰り延べることができます。贈与された財産は相続時に相続財産に加算され、相続税が計算されます。

遺言書について

遺言書とは

遺言書とは

遺言書とは、「自身の死後に財産をどう分けたいか」という被相続人の意思を示すものです。生前に相続人の話を聞き配分を定めて遺言書を遺すことで、スムーズな相続が実現できます。また、遺言書では、遺産分割の指定だけでなく、相続する権利のはく奪や遺言執行者の指定、保険金の受取人変更などさまざまな指定が可能です。

遺言書には、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類があります。特に近年は、自筆証書遺言書を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方が増えています。この制度を利用することで、自筆証書遺言の紛失や改ざんのリスクを防ぎつつ、手軽に遺言書を作成できます。

一方で、公正証書遺言は、公証人が作成するため法的効力が確実で、手続きもスムーズに進むという特長があります。遺言書の作成に不安がある場合は、専門家に相談するか、公正証書遺言を検討するのがおすすめです。

遺言書がある場合の相続

遺言書がある相続では、遺言書に記載された通りに財産の分割が行われます。不動産の相続登記をする際も遺産分割協議書が不要なので、相続人によるトラブルも回避しやすくなります。

不動産の相続登記に使える遺言書とは?

以下のいずれかの条件を満たしている遺言書は、相続登記の際も使用が可能です。

  • 公証役場で作成された「公正証書遺言書」
  • 検認を受けた「自筆証書遺言書」または「秘密証書遺言書」
  • 自筆証書遺言書(自筆証書遺言書保管制度)

財産の把握

財産を把握することの重要性

財産を把握することの重要性

財産把握は相続の第一歩として、まず行わなければいけないことです。相続の対象となる資産が「どこに」「どれだけ」あるのかがわからなければ、相続を進めることができません。そのため、生前に相続の話をすることに抵抗がある方も多いかもしれませんが、トラブルを避けるためにも話し合いの機会を作ることが大切です。

また、財産の場所や内容を明確にしておくために、「エンディングノート」を活用するのも効果的です。エンディングノートに財産情報や資産の所在を記録しておくことで、遺族がスムーズに相続手続きを進めることができます。手軽に始められる方法として、ぜひ検討してみてください。

把握しておきたい財産のリスト

あらかじめ把握しておきたい財産としては以下のようなものが挙げられます。

  • 現金、普通預金、定期預金などの「現金・預金」
  • 株式、投資信託、社債などの「有価証券」
  • 家屋・土地などの「不動産」
  • 生命保険
  • 借入金